新訳『アリストテレス全集・第一巻』の、訳語に関する注記一覧
- 2017/03/22
- 17:27
一カ月ほど前から、『新版 アリストテレス全集 第1巻 カテゴリー論 命題論』というのを読んでおります。
2013年から始まったアリストテレス全集の新訳事業、その1冊目ですね。
アリストテレス -wiki
アリストテレス全集 -wiki
私、ギリシャ古典哲学の本を読むのはこれが初めてです。前々から読まなきゃと思ってたけど、やっぱ敷居が高いというか、面倒そうで。ですがこの新訳シリーズは日本語文としてかなり読みやすくなってるらしい。そして、プラトンとかよりずっと分かりやすいらしいアリストテレス、の中でも一番初心者向けらしいカテゴリ論。古典哲学を読むなら、まずはここからでしょうねえ。
と考えて読んでみたんですけど、やっぱ難しい。
何を言ってるかが分からないw
っていうレベルの難しさ。
いつも通り、読んだ本の感想とかメモをまとめて記事にしたいのだけど、どう手を付けたら良いかも分からない。でもまあ外堀からじわじわ埋めてく作戦で、まずは「用語に慣れる」とこから始めてみようかと。
翻訳者・中畑正志氏による『カテゴリー論』解説、そのp.289に、以下のような事が書かれてます。
翻訳するうえで最も苦労したのは、注や補注の多くがそのために費やされていることが示すように、基本的なタームの訳語の選択である。アリストテレスが意味しようとした(と解される)事柄とすでに確立してる訳語との関係をいかに調整するのかという事に最後まで悩まされた。翻訳では、著者の思考を伝えることが最重要であるが、すでにアリストテレスの訳語というだけでなく哲学の基本タームとなっている言葉との連絡も無視できないと考えたからである。訳者としては、この点への配慮からおこなったある種の妥協が無意味でなかったことを願ってる。
明治の頃に西洋の学問を大量輸入して、それまでの日本にはなかった概念等を表すための漢語をいろいろ工夫した。それらはお固くていかにも学問っぽいふいんきのワード集だけど、正確・適格な翻訳ではない。だから大幅刷新したいけど、あまり変えすぎると今までの積み重ねを反故にしてしまう。とはいえけっこう変えてしまったし、そこら辺の事情は注にもしっかり書いたから。
というような事ですね。そこで私は、多くの分量が費やされたという、その訳語の選択を説明する注が実際どれくらいの分量かを調べてみました。それが↓の一覧。
オレンジ枠は、とても重要。緑は、やや重要。これについては後で私なりの説明を書きます。
無色は、重要じゃないって事は無いけど、こういう記事でまとめ直すまでもない。再度読み返す時に都度確認し直すので十分かなと思うもの。


以上です。見落としはないはず。あと、カテゴリ論の上から三つ目の「について語られる」は訳語選択についての注じゃないんだけど、この書の中では重要な件で、しかも分かりにくい。なのでメモ書きを残しておくべき。なのでこの一覧に加えておきました。
私、ギリシャ語の知識は皆無です。重要ワードだけは注に載ってる原語を見ながら入力したけど、字がちっちゃいという事もあり、なんだかよく分かりません。当方は老眼ですし。数学で使う文字なら知ってる。あとキリル文字は一応読めるからそこからの類推も援用して、がんばって入力しましたですよ。だけどそんなんじゃ、間違いないかの確信なんて持てないものですなあ。
ともあれ早速、上の表の色付枠の語について説明を、と行きたいところなんだけどその前に、先に引用した中畑氏の文中に「ターム」とある。きょうび見かけないワードかも。哲学業界では普通に使われてるのかもだけど、私にはちょっと縁遠い。というような語が他にもいくつかありました。
・ターム
・術語
・述定
・言語学上の身分
この四つ。まずはこれらの語義の確認を。
ターム -コトバンク
term -Weblio辞書
術語 -コトバンク
学術用語 -wiki
どちらも、学術用語、専門用語のことみたいですね。ただ、カタカナ語としての「ターム」には、「キーワード」的なニュアンスが含まれてる場合もあるかも。
述定 -google検索
「述語を使って性質を帰属すること」by小山虎さん
等々なんだけど、これちょっとどうかな。いや、『カテゴリ論』の中でも最も重要なワードの一つであるカテーゴレイスタイの訳語が「述定」なんで、ちょっとどうかなで済ますのはマズい。
『命題論』の方の翻訳者・早瀬篤氏もカテーゴレイスタイに注を付けていて、
p.123
基に措定されたものに別の事物が結びつけられること、あるいは名詞に動詞が結びつけられることを意味する。
例えば「ソクラテスは白くある」という命題において、<白い>という物事がソクラテスに述定されている。
(あるいは「白い」という動詞が「ソクラテス」という名詞に述定されている)
これ、分かったような気になれる説明ではあるのだけど、なんか変だとも思う。日本語にもともとあった述定という語を、アリストテレスが用いるカテーゴレイスタイという語、もしかしたらアリストテレス独自の用い方をしてるかも知れないこの語、の訳語に当てている。その結果、妙に歪(いびつ)な循環定義が生じてないか?
というのは素人考えなので、ともかく一応の意味合いは以上の通り。なお、上記引用個所での「名詞・動詞」は、この『命題論』という書内だけでの独自の意味合いで用いられてる語で、一般的な意味での名詞・動詞とは少し違います。この件については「基に措定されたもの」共々、あとで説明し直します。
「言語学上の身分」
これはWebをググっても出てきません。待遇表現の事ではなく、品詞の種類の事でもない、と思う。文中での各語の重要度の軽重の事かなと思うけど、確信は無し。まあこれ、何ページかは忘れたけど一回きり使われてただけなので、よく分からなくてもあまり困りません。
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さてでは、↑に画像を貼った表の色付枠の説明を、といきたいとこだけど、ここまで書くのでもう疲れた。続きは後日。この本については、こういう小出し記事を少しづつ書いて、それを後で一つにまとめる事になりそう。
2013年から始まったアリストテレス全集の新訳事業、その1冊目ですね。
アリストテレス -wiki
アリストテレス全集 -wiki
私、ギリシャ古典哲学の本を読むのはこれが初めてです。前々から読まなきゃと思ってたけど、やっぱ敷居が高いというか、面倒そうで。ですがこの新訳シリーズは日本語文としてかなり読みやすくなってるらしい。そして、プラトンとかよりずっと分かりやすいらしいアリストテレス、の中でも一番初心者向けらしいカテゴリ論。古典哲学を読むなら、まずはここからでしょうねえ。
と考えて読んでみたんですけど、やっぱ難しい。
何を言ってるかが分からないw
っていうレベルの難しさ。
いつも通り、読んだ本の感想とかメモをまとめて記事にしたいのだけど、どう手を付けたら良いかも分からない。でもまあ外堀からじわじわ埋めてく作戦で、まずは「用語に慣れる」とこから始めてみようかと。
翻訳者・中畑正志氏による『カテゴリー論』解説、そのp.289に、以下のような事が書かれてます。
翻訳するうえで最も苦労したのは、注や補注の多くがそのために費やされていることが示すように、基本的なタームの訳語の選択である。アリストテレスが意味しようとした(と解される)事柄とすでに確立してる訳語との関係をいかに調整するのかという事に最後まで悩まされた。翻訳では、著者の思考を伝えることが最重要であるが、すでにアリストテレスの訳語というだけでなく哲学の基本タームとなっている言葉との連絡も無視できないと考えたからである。訳者としては、この点への配慮からおこなったある種の妥協が無意味でなかったことを願ってる。
明治の頃に西洋の学問を大量輸入して、それまでの日本にはなかった概念等を表すための漢語をいろいろ工夫した。それらはお固くていかにも学問っぽいふいんきのワード集だけど、正確・適格な翻訳ではない。だから大幅刷新したいけど、あまり変えすぎると今までの積み重ねを反故にしてしまう。とはいえけっこう変えてしまったし、そこら辺の事情は注にもしっかり書いたから。
というような事ですね。そこで私は、多くの分量が費やされたという、その訳語の選択を説明する注が実際どれくらいの分量かを調べてみました。それが↓の一覧。
オレンジ枠は、とても重要。緑は、やや重要。これについては後で私なりの説明を書きます。
無色は、重要じゃないって事は無いけど、こういう記事でまとめ直すまでもない。再度読み返す時に都度確認し直すので十分かなと思うもの。


以上です。見落としはないはず。あと、カテゴリ論の上から三つ目の「について語られる」は訳語選択についての注じゃないんだけど、この書の中では重要な件で、しかも分かりにくい。なのでメモ書きを残しておくべき。なのでこの一覧に加えておきました。
私、ギリシャ語の知識は皆無です。重要ワードだけは注に載ってる原語を見ながら入力したけど、字がちっちゃいという事もあり、なんだかよく分かりません。当方は老眼ですし。数学で使う文字なら知ってる。あとキリル文字は一応読めるからそこからの類推も援用して、がんばって入力しましたですよ。だけどそんなんじゃ、間違いないかの確信なんて持てないものですなあ。
ともあれ早速、上の表の色付枠の語について説明を、と行きたいところなんだけどその前に、先に引用した中畑氏の文中に「ターム」とある。きょうび見かけないワードかも。哲学業界では普通に使われてるのかもだけど、私にはちょっと縁遠い。というような語が他にもいくつかありました。
・ターム
・術語
・述定
・言語学上の身分
この四つ。まずはこれらの語義の確認を。
ターム -コトバンク
term -Weblio辞書
術語 -コトバンク
学術用語 -wiki
どちらも、学術用語、専門用語のことみたいですね。ただ、カタカナ語としての「ターム」には、「キーワード」的なニュアンスが含まれてる場合もあるかも。
述定 -google検索
「述語を使って性質を帰属すること」by小山虎さん
等々なんだけど、これちょっとどうかな。いや、『カテゴリ論』の中でも最も重要なワードの一つであるカテーゴレイスタイの訳語が「述定」なんで、ちょっとどうかなで済ますのはマズい。
『命題論』の方の翻訳者・早瀬篤氏もカテーゴレイスタイに注を付けていて、
p.123
基に措定されたものに別の事物が結びつけられること、あるいは名詞に動詞が結びつけられることを意味する。
例えば「ソクラテスは白くある」という命題において、<白い>という物事がソクラテスに述定されている。
(あるいは「白い」という動詞が「ソクラテス」という名詞に述定されている)
これ、分かったような気になれる説明ではあるのだけど、なんか変だとも思う。日本語にもともとあった述定という語を、アリストテレスが用いるカテーゴレイスタイという語、もしかしたらアリストテレス独自の用い方をしてるかも知れないこの語、の訳語に当てている。その結果、妙に歪(いびつ)な循環定義が生じてないか?
というのは素人考えなので、ともかく一応の意味合いは以上の通り。なお、上記引用個所での「名詞・動詞」は、この『命題論』という書内だけでの独自の意味合いで用いられてる語で、一般的な意味での名詞・動詞とは少し違います。この件については「基に措定されたもの」共々、あとで説明し直します。
「言語学上の身分」
これはWebをググっても出てきません。待遇表現の事ではなく、品詞の種類の事でもない、と思う。文中での各語の重要度の軽重の事かなと思うけど、確信は無し。まあこれ、何ページかは忘れたけど一回きり使われてただけなので、よく分からなくてもあまり困りません。
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さてでは、↑に画像を貼った表の色付枠の説明を、といきたいとこだけど、ここまで書くのでもう疲れた。続きは後日。この本については、こういう小出し記事を少しづつ書いて、それを後で一つにまとめる事になりそう。
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- テーマ:哲学/倫理学
- ジャンル:学問・文化・芸術
- カテゴリ:雑文(よろずネタ)
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